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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第10章 第二話 【桔梗の涙】 切ない口づけ(キス) 

 王妃が健康を取り戻したことで、ユンは漸く少しだけ愁眉を開いた。心の通わない形だけの夫婦ではあっても、王妃が妻であることに変わりはない。
 最悪の場合、ユンは王妃と明姫の両方を失っていたかもしれないのだ。それにしても、我が母ながら、大妃は怖ろしい人だと思う。
 娘のように可愛がってきた王妃をも己れの目的を遂げるためには平然と利用し切り捨てられる。どうして、そこまで冷徹になれるのか、ユンには皆目判らない。
 中宮殿にいたのは四半刻ほどだったが、当たり障りのない会話をしただけだ。もちろん、王妃が側室である明姫が今回の件で義禁府に囚われの身となっていることを知らないはずがない。

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