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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第10章 第二話 【桔梗の涙】 切ない口づけ(キス) 

「よし、そなたが食べたくないというのなら、私が食べさせよう」
 ユンはまた悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「その盆をこちらに寄越しなさい」
「殿下」
 明姫が何か言いたげに口を開くのに、覆い被せるように言う。
「良いから。私はそなたの良人であり、この国の王なのだぞ? そなたは王の命がきけぬというのか?」
 これは王命である。と、笑いながら言うユンを明姫は潤んだ瞳で見つめた。こちらへと手を差し出す大きな手のひらに、震える手で格子の間から碗を渡す。

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