
身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第10章 第二話 【桔梗の涙】 切ない口づけ(キス)
―あの隠れ家にもう一度行ってみたい。
彼に告げたあの言葉は嘘じゃない。でも、本音は隠れ家に行きたいのではなく、二人きりであの隠れ家で過ごした時間に戻りたかったのだ。
まだ彼がこの国の王などではなく、ただの学者の若者ユンだと信じていたあの頃に。心底から帰りたいと思った。
けれど、現実としてユンは朝鮮国王なのだ。それを言えば、ユンを困らせ哀しませるだけだと判っているから、言わないし言えなかった。
泣きながら、明姫の意識は完全に闇に飲み込まれた。
彼に告げたあの言葉は嘘じゃない。でも、本音は隠れ家に行きたいのではなく、二人きりであの隠れ家で過ごした時間に戻りたかったのだ。
まだ彼がこの国の王などではなく、ただの学者の若者ユンだと信じていたあの頃に。心底から帰りたいと思った。
けれど、現実としてユンは朝鮮国王なのだ。それを言えば、ユンを困らせ哀しませるだけだと判っているから、言わないし言えなかった。
泣きながら、明姫の意識は完全に闇に飲み込まれた。
