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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第11章 第二話 【桔梗の涙】 しばらくの別離  

「本気でおっしゃっているのですか、兄上」
 大妃が信じられないという表情で問うのに、彼は鷹揚に頷いた。
「ただし、無事に御子が生まれればの話ですがね」
「では、兄上―」
 大妃の瞳が妖しく輝いた。領議政は眼前でおもむろに扇を開く。その陰から低い声で囁いた。
「何事も時として思わぬことが起こるものですよ、大妃さま」
 二人ともに眼線を合わせ、ひそやかな笑みを零す。こういうときの表情は不思議なもので、普段はまるで似ていない兄妹がうり二つに見える。

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