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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

「つまり、それぞれに他人には到底、理解しがたい苦労があると?」
「そうね。きっと、そうなんだと思う。あなたにはあなたの、私には私の苦労っていうか悩みがきっとあるでしょう」
 男はやがて眼を瞑り、静かな刻が流れた。眠っているものだとばかり思っていたから、話しかけられたときはかなり愕いた。
「やはり、そなたは不思議なおなごだな」
「どうして?」
 男が眼をゆっくりと開く。切れ長の黒瞳は漆黒の闇よりも深く、じいっと見つめられると、その瞳の中に魂ごと絡め取られてしまいそうになる。明姫は思わず視線を彷徨わせた。
「可愛らしい外見、その愛らしい唇からは到底、信じがたいような難しきことを口にする」

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