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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

「やっぱり、あなたも両班のお坊ちゃんね」
 明姫は笑った。
「どうも、その口ぶりはあまり褒められているわけではないようだな」
「確かに」
 明姫があっさりと頷くのを見、男は心外だという顔になった。
「何故、そのように思うのだ」
「あなた、口が上手すぎるわ。そうやって甘い科白を一体、何人の女に囁いたの?」
「馬鹿なことを申すな。私は息をするように偽りを口に出来る男ではない。そんな器用なことができるなら、とっくにそうしていた」
 そうすれば、無用な諍いを生むこともなかった。
 男が呟くのを聞き、明姫は肩を竦めた。

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