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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第12章 第三話 【観玉寺の廃妃】  再会

 だから、仮病を使って寝所に籠もり、誰にも見つからないようにそっと宮殿を抜け出してきたのだ。ユンには明姫と出会う前から、宮殿をしょっちゅう抜け出しては都を徘徊していた前歴? がある。
 黄内官はもちろん、彼がお忍びで町を出歩いていたことは知っている。〝民情視察〟などともっともらしい言い訳を並べ立てるユンに苦言は呈したものの、止めようとまでしなかった。だが、せめて伴の内官を一人以上は連れていくようには口を酸っぱくして言っていた。
 むろん、ユンは黄内官の言うことをきかず、一人で町を歩き回っていたわけだが―。ゆえに、黄内官が今更、もぬけの殻の寝所を見て、心臓発作を起こすほど動転するとは思えない。

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