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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第13章 第三話 【観玉寺の廃妃】  涙の味

 それが、この山頂の寺では何の遠慮も要らない。もっとも、色欲を禁ずる聖域である寺で、あのように淫らな行いを繰り返したというのは確かに罰当たりだという気はするけれど。これまでの明姫であれば躊躇するであろうが、あの夜はユンの顔を見ただけで、常識だとか理性だとかは消え失せてしまったのだろう。
 明姫の暮らす房は寺の広い境内でも奥まった外れにポツンと離れて建っている。僧たち起居する僧坊や寺男一家の房は本堂の近くにあるのだ。明姫の住まいが他の者たちの住まいから離れているのは、やはり慈慶和尚の計らいでもあったのだろう。

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