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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

 出ていこうとしたその手を掴まれた。
「待てよ」
「何をするの?」
 悲鳴じみた声を上げた明姫はハッとした。まるで棄てられようとする子犬のような瞳が無心に彼女を見つめていた。
「そんな眼で見ないでよ。まるで私があなたを苛めているようじゃない」
 そして、その瞳は告げていた。行かないでくれと、ここに自分を一人、置き去りにしないでと。

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