テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第13章 第三話 【観玉寺の廃妃】  涙の味

「慈鎮さま、その方は―」
 昔の知り合いなのだと苦しい言い訳をしようとした時、慈鎮がいつもの凪いだ笑みを浮かべた。こんな風に笑う時、彼がいちばんユンに似ていると思う瞬間だ。
「良いのです」
 慈鎮が明姫を遮るように言った。
「私は別にその方がどなたかを詮索するつもりはない。ですが、淑媛さま、どうかこれだけはお忘れにならないで下さい。この国には、幼い中から食べることも満足にできない子どもがごまんといる。私のようにまだ小僧になれた者は良いですが、多くは働けども働けども暮らしは楽になりません。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ