テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第13章 第三話 【観玉寺の廃妃】  涙の味

 ちなみに、アレというのは小麦粉を練って油で揚げた菓子―揚げパンである。実は明姫の大好物なのだが、山寺ではなかなか手に入らない貴重品だ。
 麓の村長の妻が地方両班の娘ということで、時々、油や小麦粉、砂糖といった材料を少しだけ寺まで届けてくれる。その材料を少し拝借して作る揚げパンはこの二人の幼い小僧たちに大人気であった。もちろん、揚げたばかりのパンには砂糖をまぶす。
「ところでさ、淑媛さま、何か良いことがあったのかい?」
 ませた口調で訊いてきた慈然に、明姫は眼を瞠った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ