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わすれない

第2章 それぞれの傷

「なっ…! 別に泣いてないしっ!!」


強がった言い方にも気にせずガハハッと笑う男。



「…あ、あたし」


男は、ん?と顔を向ける。
私は何て言っていいかわからず口ごもる。

「心配すんな。俺の家を連絡先にしてある。お前は早く肩の怪我を治せ?」


男はまたニカッと笑った。


――いいやつすぎ。


コンコンッ


病室のドアが開いて看護師が入ってきた。

「 美咲さん? 目が覚めました? 肩の具合は大丈夫ですか?」


バインダーを片手に私に近づき笑顔をむけて聞いてくる。

「はい、少し痛いけど大丈夫です。」


「そう、いまは痛み止が効いているから少しの痛みかもしれないわね。でも、痛みが強くなったらすぐに言ってね?」


「はい。わかりました。」
看護師さんは点滴やなんかのモニターをチェックしながら質問をしてきた。

「アレルギーとか、合わない薬とかないかしら?」

「はい、…たぶん。」

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