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わすれない

第2章 それぞれの傷

ラウンジにいると、後ろに誰かいる気配がした。
振り返ると立っていたのは美咲で、うつ向きながら謝ってきた。



俺は何も言えず、頷いただけだった。



美咲は隣に立ち、俺と同じく窓の外を見ていた。
ただじっと、なにも話さずにたっているだけだった。



ーーちくしょうっ。俺はなにしてんだっ!




俺の頭の中でゆかりと美咲が被って映る。ゆかりを助けられなかったことをまだ悔いている。そう確信してしまった。そして、美咲が俺のなかででかくなっているということも……。


美咲の方をチラッと見ると、どことなくゆかりに見えてしまい目を閉じた。少したったころ看護師が来て美咲を部屋へと連れていった。


美咲は俺がまだラウンジにいたいと言うとすごく淋しそうに俯きながら歩いていった。俺はその姿にやりきれないなにかを感じた。

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