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Sky Blue

第2章 帷


「九条っ!こんな所にいたのか、探したぞ。今校内放送をかけようとしたところだ。」

本当に今日はタイミングが悪い……よりによってそんな大声で名前を呼ぶなんて。

悪気なんてあるわけもなく、片手を軽く挙げて近づいて来るのは生徒会顧問の上河だ。

「やべっ九条じゃん…」
「聞こえちまったか…?」


最後だけ小声で話しても、それは全く意味のない行為だった。足早に去って行く二人の背中を無心に眺めていると、下校を知らせる鐘が頭上で鳴り響いた。









“九条 泉”


青南高校に通う高校2年生。入学以来常に主席の座をキープし続け、その成績は目を見張るもので全国から見てもトップクラスだ。さらに運動神経抜群、高2にして生徒会長ときたら、泉に一目置かない教師などいるはずもなかった。


そんな泉に憧れる女子も後を絶たない。近付き難い雰囲気を与える為、少し離れた所で騒がれるといった感じだが…。その光景はまるで好きな芸能人をテレビ越しに見つめ歓声を上げる姿に似ている。直接話し掛けたり、まして告白する者なんて滅多にいない。


美男子とまではいかないものの、普通より整った顔立ちに落ち着いた物腰。染めたことのない黒髪はサラサラといった表現が相応しく、その長くも短くもない髪型は清潔な印象を与える。そして性格の問題もあるが、笑顔を安売りしない所も全て、その人気を確実なものとしていった。



―――ただ、笑わないのではなく笑えないのだ。

感覚が少しずつ失われていく………

親を含め、まだ誰一人としてそんな泉に気付く筈もなく、また泉自身も気付いてなどいなかった。


この時はまだ誰も………――――。

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