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赤い花~情欲の檻の中で~

第3章 MemoriesⅡ

 現に、二年遅れで入ってきた同い年の牧村爽菜(さな)は三年前に結婚、その二年後に出産した。一年の育休が終わり、今年の春から職場復帰して、子どもは保育園に預けて独身時代と同じように精力的に仕事をこなしている。
 爽菜とは親友とも呼べるほど仲が良いので、彼女の奮闘ぶりは余計によく知っている。
―ここまで引っ張っておいて、結婚するつもりのない男とこのままずるずると関係を持っていくつもりなの?
 美華子は鏡の中の女に問いかける。いや、祥吾が仮にアメリカ支社の出向人員に選ばれれば、自分は早晩棄てられる。何しろ彼は美華子と結婚する意思はこれっぽっちもない。

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