
私
第6章 一週間前
「百合子様、
もう一杯いかがですか?」
「あら、私、マスターに名前言ったかしら?」
「いいえ、
あなたはこちらでは、優雅で華やかで有名なんですよ。」
「まぁ、そうなの?
きっと民江さんか宮本が私の名前を知らせたのね。」
「いいえ、
お二人ともからは何も聞いておりませんよ。
でも、宮本様にはご注意して下さいね。」
ご機嫌だった、マスターの顔が歪んで見えた。
勢いで飲んだシャンパンは既に空になっていたので、気を利かせたマスターが、もう一杯入れてくれた。
私はシャンパンに口をつけたが、相変わらず味がしない。
