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ボカロで小説

第1章 からくりピエロ


 彼女と初めて会った時も、きっと僕はこんなふうに座っていた。友達と喧嘩して、公園のブランコに一人ぼっちだった。

 目の前に差し出された手は砂がついてところどころ茶色く、はっとして顔をあげると、見ず知らずの女の子がそこに立っていた。彼女は白いワンピース姿で、手と同じく、その服も砂で茶色くなっている。


『遊ぼう』


 汚れた手をしきりに伸ばし、はにかむように笑いながら、もう一度同じように繰り返してきた。

 あの時突っぱねたらよかったんだ。知らない女の子の手なんて。

 だけど、おそるおそる掴んだ手は柔らかくて温かくて、寂しかった僕は、なんだか初めて人のぬくもりに触れたような気がして、彼女に夢中になってしまった。

 それからずっと僕は彼女が好きだ。好き。大好き。

 彼女はとてもわがままで、今日みたいに僕のことを振り回す。ひどい仕打ちを何度もされた。そこには悪気なんて一つもなくて、だから余計にたちが悪い。彼女を責めることもできやしない。


『優しいね。ピエロさんみたい』

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