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運命操作

第1章 そして物語は動き出す

「“魔女”さ」

そう聞いて、思い浮かべたのはただ一人であった。だが、すぐに自身で否定する。

まさか。あれはただのあだ名。海棠さんは才色兼備で…女子たちの憧れであると同時に、妬みの対象でもある。単に形容しただけ…。


「君の知ってる人物だ」

「誰なの?」

「それは――探すことだな、自ら」

「探すって言っても…」

「運命を操るとき、彼女はなにかしぐさをするはずだ」

「どんな?」

「そこまではわからない――だが手助けとなる力を与えよう。…さあ、目を閉じるんだ」

あたしは言われた通り、目を閉じる。しばらく待つが、何かされるわけでもなく、ただ静かであった。だが一瞬、目の前に、なんとなく何かの気配を感じた気がした。

「…目を開けてもいい?」

「ああ」

真っ白の世界が、再び目に飛び込んでくる。周りも、自身も、一見なにも変わった様子はなかった。

「運命の糸、って知ってるだろ?赤い糸で結ばれてる、なんて言うあれさ」

「うん」

「あれに似たものは、確かにある。魔女はそれを手繰り寄せ、絡まったものをほどき、断ち、誰か別の者と結ぶ。そうやって都合のいいように操作してるのさ」

「へえ…」

「たった今、君たちの言う“運命の糸”を見る力を君に与えた。絡み合う運命のその先――誰と結ばれるかを、君は知ることができる」

「あたしの運命の相手がわかるってこと?」

「すべての人のさ」
気のせいか、声が遠退いていく。時間だ、という声を皮切りに、あたしの頭の中が、真っ白になって――

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