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運命操作

第2章 運命操作?

「これ、日向のでしょ?」
差し出した手には、紙のケースに収まった小さな消しゴムがあった。

ケースには、ハサミで切られた跡がある。消しゴムがすり減り、ケースに埋まって消しにくくなってきたため、あたし自身がそうしたのを覚えている。

「あ…うん。ありがとう」
受け取り、礼を言うけれど…なんだか相手の顔を見られずにいた。彼の左胸の、“中村”の文字をひたすら見る。

「久しぶりだね。話すの」

まさかそのまま話しかけられるなんて思ってなかったから、思わず顔をあげてしまった。

「そう、だね」

目が、合う。少しずつ、少しずつ…外していく。


彼と言葉を交わすのは、本当に久しぶりであった。以前はしばしばあった些細な会話さえ、今ではまったくなくなっていた。

いつだったか…今でもよく覚えてる、彼の言葉。

“あのカラス、鳴いてると思う?哭いてると思う?”

オレンジの窓を見つつ、彼は言った。コツコツとひかえめな音を立て、“鳴いてるor哭いてる”と書かれていく。考えたこともなかったから、少しびっくりした。


「席、離れたもんね」
目の前に立つ彼が言い、あたしは思い出すのをやめた。

「うん…」
視界の片隅に写る彼の優しい笑みが、懐かしくて切ない。ダメ…作り笑いがほどけてしまいそう。

「じゃあ」
彼は片手を上げ、行ってしまった。

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