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話を聞いてみると、原因は些細なことであった。女子トイレは、階段のすぐ横にある。トイレを出て、周りをよく確認せず歩き出した楓と、階段を上って来た男子生徒がぶつかってしまったのである。

男子生徒は、反射的に手すりにつかまり、なんとか階段を転げ落ちずに済んだ。怪我などはほとんどないはずだが、虫の居所が悪かったのか、男子生徒はそこまでかというほど激昂した。

逆上した男子生徒が何度も何度も楓の腹を蹴っていたところを、梨花が見つけた。楓は繰り返される蹴りにうずくまって耐えながら、ひたすら謝り続けていた。

梨花は間に入り、男子生徒を止めた。続いてあたしが駆けつけ、二人に距離を取らせ、現在に至る。

「悪かったね。楓も申し訳ないと謝ってることだし、許してやってくれないかな」
梨花が言った。正直、楓の不注意だけが原因ではないが、関わると面倒な相手である。なるべく穏便に済ませたかった。

男子生徒の気は、まだ収まっていないようであった。だが取り敢えず冷静になったのか、不快そうに顔を歪め、舌打ちを残してその場を去った。

もうすぐ授業が再開する。あたしたちは、鐘が鳴る前に校庭へ急いだ。