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運命操作

第5章 捨てきれぬ想いとトラブルの火種

ガラッと扉の開く音に振り向くと、意外な人物が立っていた。

「お疲れさま」
中村が微笑む。あたしは驚いて、何も言えずにいる。

「忘れ物を取りに来たら、懐かしい音が聴こえたから。覗いてみた」

「まずはゆっくり、楽器なしで指だけ動かしてやってみるといいよ。どこだっけ?」
見せて、とあたしの楽譜を横から覗き込んだ。チラ、と目をやると、すぐそこに顔があった。

あたしは顔が熱くなるのを感じながら、ここ、と楽譜を指差した。

「ああ、ここね」

彼は吹奏楽部の部員ではない。だが、以前楽器を習っていたと聞いたことがある。

メロディーを口ずさみながら、確認するように指を動かす彼。2、3回それを繰り返すと、やってみて、とあたしに言った。

彼の言う通り、あたしは楽器を置く。そして彼が口ずさむ中、あたしは指を動かした。初めは、あたしに合わせるようにものすごくゆっくり、二回目からだんだん早く。

何度かやっているうち、指が自然と動くようになっていた。

「じゃあ、今度は楽器ありでやってみて」

「うん」

「ゆっくりね。いくよ。いち、に、さん」

彼の合図で、キュッと結んだ唇に力を込めた。練習した通りに指を動かすと、優しくて堂々とした音が紡がれていく。

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