運命操作
第1章 そして物語は動き出す
「日向っ…!?」
急に走り出したあたしを、青木が追いかけてくる。げっ、と思うが、ここまでは一応想定内である。
階段をかけ上がり、トイレまで猛ダッシュ。さすがに女子トイレまではついてこれまい。中へ入り、ほっと息をついた。
鞄のままトイレに来るなんて、あたしくらいである。
鏡を見る。走ってきたため、髪はぐちゃぐちゃ。手ぐしで整えていると、個室の扉が開いた。
……あ。
出てきたのは、海棠 香織――カイドウ カオリ――。中村茅の彼女である。
口数は多くはなく、大人びていて、ミステリアス。そして何より、立てばしゃくやく、座ればぼたん、歩く姿はゆりのはな――要するに、美人。彼とはお似合いだともっぱらの噂である。
だが、誰が呼んだか――彼女には異名がある。
“魔女”
彼女は一部の女子たちに、陰でそう呼ばれている。なぜ呼ばれるのか、はっきりとはわからない。だけど…少しだけわかる気がする。そう呼ばれる理由が。
彼女は大勢でつるむタイプでもなく、友人がまったくいないわけではないが、大抵は一人でいて、たまに何人かと会話をする程度である。自らのことを積極的に話さず、謎に包まれている。
そういった秘密めいたところが、どこか人を引き付けるのかもしれない。
急に走り出したあたしを、青木が追いかけてくる。げっ、と思うが、ここまでは一応想定内である。
階段をかけ上がり、トイレまで猛ダッシュ。さすがに女子トイレまではついてこれまい。中へ入り、ほっと息をついた。
鞄のままトイレに来るなんて、あたしくらいである。
鏡を見る。走ってきたため、髪はぐちゃぐちゃ。手ぐしで整えていると、個室の扉が開いた。
……あ。
出てきたのは、海棠 香織――カイドウ カオリ――。中村茅の彼女である。
口数は多くはなく、大人びていて、ミステリアス。そして何より、立てばしゃくやく、座ればぼたん、歩く姿はゆりのはな――要するに、美人。彼とはお似合いだともっぱらの噂である。
だが、誰が呼んだか――彼女には異名がある。
“魔女”
彼女は一部の女子たちに、陰でそう呼ばれている。なぜ呼ばれるのか、はっきりとはわからない。だけど…少しだけわかる気がする。そう呼ばれる理由が。
彼女は大勢でつるむタイプでもなく、友人がまったくいないわけではないが、大抵は一人でいて、たまに何人かと会話をする程度である。自らのことを積極的に話さず、謎に包まれている。
そういった秘密めいたところが、どこか人を引き付けるのかもしれない。