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?…好き…?

第8章 見舞い…

「これがジャマねぇ」
肘掛けが出ていた。
肘掛けを畳むと、彼女は少しだけシートを倒した。
彼女からの、GOサインだと思った…
しかし、彼女は今も、左胸から、管が出ている。
その先にはパックが、そしてそのパックを入れているバッグを掛けている…
「あんなに激しいメールだったのに、昨日は何もしなかったじゃん?今日もムリすることないんだぜ?俺、仕事帰りで、汗臭いし」
入院中の彼女、廃液のパックが繋がっているままの彼女に、気を遣ってそう言った。
彼女はホ○ルに入った時、シャワーを浴びて、歯も磨かないと、気がすまない感じだった。
kissするのに食べカスがあったり、臭いがしたら?と、気にしてしまう、と言っていた。
二人とも仕事帰り、という同じ条件ならまだ良いが、今日は、俺だけが仕事帰り、どうしても、それも気になってしまう…
「あのね~、昨日のが臭かった(笑)」
「えっ!?ウソッ!?昨日は休みで、ここ来る直前に、シャワー浴びてっ、歯磨いてっ…?あっ!昼飯子供達が食べたがって、とんこつラーメン喰いに行った!何気にニンニクが!?」
「あ~、それかもぉ~」
「昨日、もしかして、それで…?」
「そう、チューするつもりだったのに、やめちゃった(笑)」
「ごめ~ん…」
でも、今日は大丈夫ってことだよな、良かった…
そう思ったら、どうしようもなく、kissしたくてたまらなくなった…
ウチの車の2列目のシートは、繋がっておらず、運転席と助手席の様に、2つが離れている。
彼女が座っているシートにそっと近付き、肩の上辺りに手をかけた…
反対の手で、彼女の眼鏡を、初めて…俺自身が外した…
前と同じ、視力の悪い目をパチパチさせて、俺を見つめる笑顔…
ずっと…
忘れることの出来ない笑顔が…
今また…
すぐ目の前に…
胸が…
ドキドキする…
何とも言えない感覚…
大きくはないが、綺麗な二重瞼の、円らな瞳…
目の下の泣きぼくろ…
少し上向きで、本人は気にしているけれど、可愛らしい鼻…
微かに笑みを浮かべ、わずかに歯を覗かせる、開いた口元…
厚すぎず薄すぎもしない、唇…

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