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?…好き…?

第10章 退院…

考えてばかりいても仕方ない。
とにもかくにも、彼女は待っている筈だ。
先ずは、俺の勤務が終わったことを伝えよう。
電話をするか、メールをするか…
着替えをする前に喫煙所に行く。
煙草に火を着ける。
心が乱れていた。
吸わずにいられなかった。
携帯を取り出す。
Eメールあり、の表示。
いくつかのメールの中に、彼女の名前があった。
俺は、少し緊張してしまっていた。
にもかかわらず、焦るようにメールを開いた…
『今日はどうするの?退院の手続きは終わったし、もう病院出られるよ、帰っちゃおうかな?』

え…?

え…!?

えっ…!?

えぇっ…!?

帰っちゃおうかな…?

帰っちゃおうかなっ…!?

待っている筈…

待って…いないのっ…!?

でも…
帰りたいのが普通だよな…
当たり前だよな…
俺は、彼女を帰らせるべきだ、そう思った…
それは…
一瞬だけだった…
でも…
でもでも…
でもっ…!
でもっっ!!
イヤだ!
会いたいよっ!!
やっぱり会いたいよっ!!
胸が…
詰まりそうだった…
普段の俺からは、想像も出来ない速さで、メールを打った。
『ちょっと待って!!もう終わったから!!すぐ着替えて、電話するから!!待っててよ!!』
今、この場で電話をすれば、着替えられなくなる。
余計に彼女を待たせることになる。
帰ってしまうかも。
男子更衣室へと、階段を駆け降りた。
いつもより、長く疲れた夜勤、と思っていたのが嘘の様に、跳ぶようにして…
更衣室に入る。
ポケットから、急いでキーホルダーを取り出す。
俺のロッカーの鍵穴は、今一つ調子が良くない。
あぁっ!
もうっ!!
なんでこんな時にっ!
鍵がっ!!
回れってっ!!
あぁっ!
やっと!!
クソッ!!
仮眠明けに、着替えたっきりのTシャツ…
ええいっ!!
このままでいいやっ!
それ以外のユニフォームを脱ぎ捨て、私服へと慌てて着替える。
また鍵がっ!!
締まれっ!!
締まれってのっ!!
職員通用口はもう一つ下の階。
また、疲れた身体で、跳ぶように階段を駆け降りる。
通用口では、タイムレコーダーに、ICカードをスキャン…
って、カードの入った財布が、ポケットから、引っ掛かってっ!
こなくそっ!!
やっとの思いで財布を取り出す。
カードをスキャンした。

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