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S×強気で恋になる

第66章 慣れと諦め

ガチャっと音が聞こえて
少し目を開ける


俺のいるところは電気なんかなくて
天窓から差し込む光だけで
暗くなっていた

・・・・・安藤・・?



そう思っていると、美味しそうな匂いがしてきて
料理をしている音が聞こえてくる


グゥゥゥゥウウーーー


・・・腹減った・・


それでも扉は開くことなく
テレビの音だけ聞こえてきていた

慣れてると言ったら
変だけど
逆に経験したことのある俺は
もう諦めていた

いつか飽きたら出してくれることも
向こうに殺す気がなければ
ギリギリのところで生かしてくれることも

騒いで暴れて
余計酷くされるより

関心がないほうがいいことも知っていた


そのままじっとしていると
足音が聞こえてきて
扉が開いた

外に鍵をつけていたのか
カチャカチャ聞こえてから、開けられ
俺は下手に出ようと試みなくてよかった
無駄な努力をせずにすんだ

とまで思っていた

いきなり光が漏れてきて
眩しさに目を細めた

「・・・ただいま。さみしかった?お腹すいたろ、ほら、ドックフード。あと水。置いとくから、早く食えよ」
「・・・・。」
「人間が食べても無害だぞ。いらねーの?もっとがっつくかと思ったのに、あんがい慣れてんだな。まだお預けにしたら、次がっついてくれる?」
「・・・やるなら、早くヤれよ。めんどくせぇ。・・・そんなもんいらねーよ。」

そこまで言うと
安藤の足が上がって
あ、蹴られる

そう思うより前に、足を振られていた

「可愛くねーな。出してやるから、おいで。」
「っ、・・・いっ、て、・・・」

なんなんだよ、この口調
あくまで俺は犬ってか!?

ふざけんなよ、・・・


そう思ってるのに、首輪を引っ張られて
渋々部屋から出る

その部屋はいかにも普通で変に安心する

「ポチ。何して遊ぶ?撫でてやろーか?」
「さきに・・・水飲ませろよ、」
「喉乾いたんだな。ほら、水だぞ」

犬用の器に入れられた水を仕方なく
舌で運んで飲む

少し甘い変な味がしたけど
そんなのどーでもよくて
とりあえず水を飲んだ


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