S×強気で恋になる
第66章 慣れと諦め
「真一さん遅いわねー。早く帰ってきたらいいのに。でも、横山さんが来てくれて嬉しいわあ。料理たくさん作っちゃった」
「母さん、お前にすげー会いたがってたんだ。若くて素敵ってな。」
岡崎家について、俺たちはお袋さんの手伝いをしていた
今日は隆彦と悠二と親父さんが出張らしい
俺は、隆彦を警戒していたから
すげーほっとしていた
「あ、和也さん、ケーキ頼んでたのよ。とってきてくれない?」
「あぁ。わかった。純平、ここにいて楽にしてて。俺車でちょっと行ってくる」
「え?・・・あー、うん、」
そう言うと、お袋さんと二人っきりになった
優しそうで綺麗なお母さん、って感じで
俺は何も喋らないけど
ずっと目で追っていた
「横山さん、さっきから、あの、とか、その、とかってあたしのことら呼びかけるけど、これからは美紗子さんって呼んで。そっちのがいいわ。」
電子レンジにミートローフをいれながら
そんなことを言われる
「・・・美紗子、さん、・・」
「気を遣うことないわ。真一さんの好きな人は、もう私の息子同然よ。それに、お父さんの若い頃に似てるし、私すっかり横山さんのファンよ」
そう言って、ニコッと笑う美紗子さんは
空気が柔らかくて俺もつられて笑そうだった
・・・・息子・・同然・・か
そんなこと言われたことがなくて
すげー嬉しくなって
俺は美紗子さんの手伝いをたくさんした
ーあら、優しいのね
とか
ーうちの息子みたいだわ
とか
ー結婚はできないけれど、私のこともお母さんって呼んでいいのよ?家族なんだから
とか
言われたことのないことを
たくさんたくさん言われて
25にもなって恥ずかしいけど
俺は男だけど
すっげー嬉しくて
照れるくらい嬉しくて
俺のずっと求めてた言葉を
惜しみなく言われて
待ち焦がれて追い求めていたことが
すっと胸に入ってきて
幸せで、あったかくて
俺は泣きそうだった
ー産まれきてくれたから、私たちと家族になれたのよ?横山さんと出会えてよかったわ。こんなにいい男、自慢の息子よ。・・・生まれてきてくれてありがとう。真一さんをよろしくね。