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S×強気で恋になる

第11章 アルコールの罠

「彼がやめなくて」
濁しながらそう言う。
「気持ちいいことってのは何?あいつだけあんなに酔って・・・あんた何する気だったの?」
嫌に凄まれる。
なんだこいつ。
「別に、あなたに関係ないでしょう。普段人に触れさせないガード高い純平が、あそこまで酔っ払っての初めて見たんですよ。なんかあったんじゃないっすか。心配してるだけですよ。」
扉を閉めようとする。

ガッと足が入ってきた。
「お客に随分だな。俺は彼に用事があってきたんだ。世話焼きって言うから何するのかと思いきや、飲酒禁止な身にしこたま呑ませて。お前、本当に同僚か。」
痛いところをつかれる。
見透かしたような、岡崎の視線が痛かった。

ガターンッーーー

突然何かが倒れる音がする

俺は夏目を押しやって、リビングへと走った。

椅子から落ちたのか、純平が床に転がっていた。

「純平!!!!」
思わず叫んでしまう。


触診で右手を触る。よかった、大丈夫だ。
左側から落ちたのが幸いだな。
ほっと安堵する。
ギプスしてるとはいえ、悪化すると厄介だ。

「んー。いってー。いてぇよ。もーやだ、この腕。ほんとに勘弁してくれよー。」
いつもは美人で笑わず威勢がいい純平が、やけに素直で俺は目を丸くした。
そんな俺をよそに、夏目も慌てて近づいてくる。
「純平、大丈夫か?」
「なつめー、お前どこいってたんだよー。腕が重いぞー。てかよー、気持ちいいことってのは、なんだー?美味い酒かー?」
はぁっとため息が出る。岡崎の視線が痛い。
「純平・・・。わりぃ、呑ませすぎたな。お前に客だぞ。愚痴は・・・また会社でな。俺、そろそろ帰るわ。」
「あっ、おい逃げんなー。これからだろー。なつめー!」
夏目は、気持ちいいことをする、といった自分を恨んだ。酔っ払ってるとはいえ、あんなに連呼されるとさすがに恥かしい。
岡崎さんにゲイってバレたか?
てか、なんで岡崎さん来たんだ?
担当医だからか?

ぐるぐると考えながら、夏目はマンションをあとにした。

今日もおあずけか。
これからだったのに。
俺って純平のことになると運ないよなー
そんなことを思いながら、エレベーターに乗り込んだ。

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