S×強気で恋になる
第62章 旅行が教えてくれたこと
「このアパートか?管理人から鍵もらったし入ってみるか。こい」
半ば強引に手を引かれるがままの純平を引っ張る
精神科とか心療内科に精通している友達に
強いトラウマの対処やそれを緩和する方法を
ちょくちょく聞いてはいた
無理矢理すぎたかな
俺間違ってるかな?
握る純平の手は階段を上がるごとに震え
俺は正直不安だった
けど、
俺にはこれくらいしかできねー
402と書かれた扉の前で立ち止まり
俺は純平の肩を持ち目を見た
「大丈夫。俺がいるだろ?入ろうか」
「・・・・あぁ。・・・手、離さないで」
「わかってる。」
そう言ってドアを開けると
小さな玄関があり
すぐダイニングとなっていた
その奥にリビング
そして部屋が二つあった
「純平がいつも遊んでたのはどこ?」
「え・・・こっちの部屋のクローゼットの扉の中」
ガチャっと部屋を開けると
隣に二畳ほどの広さのクローゼットがあるようで
そこに扉がついていた
そこを開けると小さな窓があった
「・・・懐かしいな。俺な・・・ずっとここにいた。もっと広いかと思ってたけど、案外狭いな」
「お前が大きくなったんだ。昔のことだろ?」
「・・・うん。みて、この傷俺がつけた」
「管理人いい加減だなー。傷残ってんの?どれ?本当だ」
「・・・なんか入ってみたら、俺が思ってたのと違う。」
「お前が思い浮かべてたのは記憶だ。記憶はさ、大人になるにつれて、いろんなこと知って脚色されんだよ。来て見たら、ただのクローゼットだろ?この部屋が空き家になってるように、お前も大人になったんだ。もうここから出てこい。な?」
「・・・だな。俺、ここに来るまで悪い思い出しか出てこなくて苦しかったけど、ここに来て見たらさ・・・真央ちゃんと遊んで楽しかったこと、お菓子もらえて嬉しかったこと・・・ちょっとしかねーけど・・・なんかそっち思い出して、・・・っく」
「泣け。今だけ、泣いとけ」
純平、俺が泣き止むまで
抱きしめてやるから
今は
今だけは
全部吐き出せ