
月夜の下で…
第3章 ~ 愛しい人 ~
楼…帰ってるかな‥‥
アパートの前で立ち尽くすみちる…
ためらいながらインターホンを鳴らすが、何の返事もなかった。
まだ帰ってないのかな …?
恐る恐るドアノブに手を掛けると、鍵はかかっていなくドアが開いてしまった。
「楼…?」
ゆっくりと部屋の中へ入り、寝室を覗こうとした時―――
「来るなっ!!」
「楼?」
「来るな…」
明らかに様子が変な楼を心配して、寝室に足を踏み入れた。
すると、寝室のベッドで頭から毛布を被った状態でうずくまっている楼の姿があった。
「どうしたの…?
具合でも――」
「いーから帰れよ!!」
怒鳴り声に思わず体がビクつき、ベッドの前で立ち止まった。
「…ごめんなさい‥‥
ひとりでお見舞いに行 かなければ…
裏切ってっ‥ごめんな さい!
嫌いにならないでっ」
後悔と罪悪感で涙がこぼれ、何度手で拭っても溢れ出てきた‥‥
その時、唇に柔らかなものが触れ‥それが楼の唇だということに気がついた。
「嫌いに‥なるわけない じゃん‥‥」
真っ直ぐな目‥‥
ぼくと‥正反対だ…
「理性がふっ飛ぶくらい みちるのことが好きだ …さっきだって…」
優しく涙を拭う指…
ふとその手を見ると、爪が鋭く伸びていて口からは犬歯のようなものが見えていた。
学校で見たのは…
気のせいじゃなかった んだっ
「ああ‥これね‥‥」
その視線に気がついた楼は、少し困ったような顔をしたが、覚悟を決めた様子で真剣な眼差しで口を開いた―――
「オレね…人狼なんだ… 信じらんないかもしれ ないけど…」
「え…じんろうって‥‥ オオカミ人間的な…? 」
「まぁ‥そんなとこ…
黙っててごめん…
人に知られたら結構ヤ バいんだ…」
「えっ…じゃあぼくに話 すのマズいんじゃ…」
「みちるは特別!
オレの…大事な人だか ら‥‥」
「楼っ!」
いつものようにニッと明るい笑顔を見せる楼を見て、こみ上げてくる想いを抑えきれずまた涙が溢れた。
そして勢いよく楼の胸へ飛び込み、ギュッと抱き締めた―――
