
月夜の下で…
第3章 ~ 愛しい人 ~
「楼っ!」
「てめぇっ…なに‥しや がったっ‥‥」
「思ったよりすごい効き 目だね」
嫌な笑みを浮かべ、殺意に満ちた目で楼を見下ろした。
「楼っ!しっかり!
…すごい汗‥‥」
楼の元に駆け寄ると、尋常じゃない量の汗が全身から吹き出していて、気持ち悪そうに口を抑えていた。
「楼になにしたのっ!? 」
「ニンニクエキスを注射 しただけだよ
お父さんの病院からこ っそり持ってきたんだ
やっぱり‥狼は犬科だ からネギ類は猛毒みた いだね
ほっといたら死んじゃ うのかな?」
「なんでそんなことっ! ?」
「月野が邪魔だったから 人ではないから人殺し にはならないでしょ? 」
パシンッ‥とみちるの手が森崎の頬に命中した。
「よくもっ
こんなひどいこと!」
睨みつけるみちるを見て、フッとまた嫌な笑みを浮かべるた。
「そんな感情的になった きみは初めて見るよ
…そんなに‥月野が大 事なんだ…?」
「当たり前でしょ!?
ぼくには楼だけだっ! 他には何もいらない!
もし‥‥楼が死んじゃ ったら…
ぼくも死ぬ!
…楼のいない人生なん てありえない‥‥」
目に涙を浮かべ‥今にも泣き出しそうなみちるを、背後から逞しい腕が包み込んだ。
「お前を残して…死ぬわ け‥ないだろ‥‥」
「楼‥‥」
「家に‥薬がある‥‥」
「じゃあ早く行こうっ!? 」
そのまま肩を貸す形で、おぼつかない足の楼を半ば引きずるようにして屋上を後にした。
残された森崎は、ギュッと拳を握りしめた後、込めていた力を緩めた。
「フッ…」
…みちる…
俺が‥入り込む隙間は ないんだね‥‥
俺が誰よりも想い焦が れた人―――…
さよなら…
俺の愛しい―――……
