月夜の下で…
第5章 ~ 略奪愛 ~
ガッシャーーンッッ!!と突然窓が割れ、何かが部屋の中に飛び込んできた―――
「なっなにっ!?」
「意外と遅かったな」
愁は不適な笑みを浮かべ、みちるから離れた。
みちるはなにがなんだかわからず、とっさにタオルケットで体を隠した。
視線の先には、人よりも遥かに大きく栗色の毛をした狼の姿があった。
もしかしてっ‥‥
「‥‥楼…?」
「変身して来んなんて
俺殺す気?
…面白れぇ‥‥」
嫌な笑みを浮かべると、一瞬で愁も狼の姿になった。
楼よりも少し体が大きく、綺麗な銀色の毛をしている。
両者は睨み合い、低いうなり声を上げた。
そして、ほぼ同時に飛びかかっていき噛み合いの争いとなった。
その衝撃的な光景に、みちるは突然の事で状況が掴めない様子で固まってしまっていた。
うなり声を上げ、二匹の狼は壁にぶち当たりながら攻撃し続ける。
力の差は見ただけでわかり、楼の体は傷だらけで毛は所々血に染まっていた。
一方の愁は無傷で、ギリギリで攻撃をかわし容赦なく牙を立てた。
「…めて‥‥やめて‥‥ 」
楼が…楼がっ‥‥!
愛しい人の痛々しい姿に涙が溢れ、タオルケットを力いっぱい握りしめた‥‥‥
その時、楼は床に押さえつけられてしまい、身動きが取れなくなってしまった。
っ!?
「もうやめてぇっっ!! 」
とっさにみちるは二匹の間に割って入り、楼を庇うように愁の首に抱きついた―――