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月夜の下で…

第5章 ~ 略奪愛 ~

 
 
 
「みちるっ!!!」
 
 
 
下校時間…
 
玄関から出て来たみちるに、私服姿の楼がいきなり抱きついてきた。
 
 
 
「えっあっ…楼っ…!? 」
「愁さんにひどい目にあ ってないっ!?」
 
「うっうんっ…」
 
「みちるっ
 オレと一緒に来てっ! 」
 
「えっ?」
 
「2人でっ…遠くに行こ うっ!?」
 
 
 っ!?
 
 
 
突然の駆け落ち宣言に、みちるは驚いて目を丸くさせた。
 
 
 
「力じゃあ…愁さんには 適わない‥‥でもっ… みちるのこと‥諦める なんてオレにはできな いっ!!
 
 みちるっ
 全てを捨てて‥オレと 来てっ!!」
 
 
 全てを捨てて‥‥
 
 元々ぼくにはなにもな かった…
 …楼に‥逢うまでは… 楼がぼくの全て――― ‥‥‥
 
「楼‥‥」
 
「負けた奴が今さらなに しに来た」
 
 
 
いつの間にか愁の姿があり、勝ち誇ったような口振りと笑みを浮かべていた。
 
その瞬間、みちるの鼓動が強く脈打った。
 
 
 
「愁っ‥‥」
 
 …体が…変‥‥
 
 愁を見ただけなのに… 体の奥が熱くなって… …どうしちゃったの‥ ‥‥?
 ぼくの体―――…
 
 
「みちる?
 顔赤いけど‥熱でもあ るんじゃ‥‥」
 
「ちげぇ意味で熱持って んだよな?」
 
 
 
そう得意げに言いながら、みちるの肩を強引に抱き寄せ、綺麗な顔を近づけた。
 
 
 
「ちょっ‥やめっ」
 
「なに抵抗してんだよ
 昨日は‥感じまくって たクセに‥‥」
 
「…めろ‥‥やめろっ! !」
 
 
 
怒りで震える拳を、楼は勢いよく愁に殴りかかって行った―――
 
だが愁は、みちるを離す素振りさえ見せず空いていたもう片方の手で腕を掴み、楼の腕がミシッと音を立てた。
 
 
 
 
 

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