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好きな人がいた

第4章 高校一年生

5月。
音楽の授業でギターを扱うことになった。
好きな人には申し訳ないが、私はギターの音が大嫌いだ。
楽曲に使われている分には聞けるのだが目の前で掻き鳴らされると頭痛がしてたまらなくなる。
一週間で授業が苦痛になった。
もともと手先が不器用で美術が苦手だから、と言う理由で、つまり消去法で音楽を選んだのだ。
音楽が大好きなわけではないのだ。
彼はギターが好きなようだった。
自宅でも少し練習しているようで、他の人より綺麗な音を鳴らしていた。
果たして彼はそのことで周りに笑われているのを知っていたのだろうか。
当時某女の子バンドのアニメが流行っていたため、明らかにそっち系の彼は嘲笑されていた。
この頃から私は彼に対して苛立ちを覚えることが多くなった。
友達がいない、増えないと嘆きながらわざわざ目立つ行動をすることの意味が全くわからなかった。
私と同じように、同調して、空気になって、そうすれば問題なく友達はできるはずなのに、と思っていた。

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