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“好きなところ”

第2章 Dye D?

今の信ちゃんは幸せなんだろうか…。

あのときはこの三人の行方を予想できただろうか…。

「亮は…ほんまは…別の人が好きやってんて。ずっと…。でも、その人にフラれたときに、僕に告白されたって。…それで、最初は拒んでたけど、次第に好きになってくれてたって…最初は聞いててん。…でも、やっぱり諦めきれんかったみたい…。」

なるべく笑って話すように心がけた。精一杯のせめてものお詫び。信ちゃんの聞きたいことを、なるべく信ちゃんが辛くならないように話すこと。

「…僕を幸せにはできないから、別れようって…。」

わざと声に出して笑って見せるもその乾いた声は余計に部屋に虚しさを運んだ。

「…ごめんな…。せっかく…僕らを結んでくれたのに…。」



「信ちゃん…。聞いて?」

一人波に乗り、楽しむ亮を遠くで見ながら、パラソルの下で僕は信ちゃんに打ち明けた話があった。

「僕な…好きな人ができたんよ。」

「そうなん。え?誰?俺が知ってる人?」

「おん。すごく身近な人。いつも…一緒におるよ。」

遠くを見る僕の目を見て感づいた信ちゃんは一言、あぁ。と呟いた。

「でもな、多分やで?多分、亮ちゃんには好きな人がおると思うねん。様子見てたらようわかるんやけどな。」

「…そうなんや…。よう見てんねんな…。俺にはさっぱりやわ。よし!ヤスの恋が叶うように、俺がいろいろ手伝ったろ!!」

「ほんまに?ありがとう!信ちゃんやったら頼もしいわ!!」

その時は誰の恋も成り立ってはいなかったが、誰一人、不幸なんて思っていなかった。
きっと恋が成立すれば、もっと幸せになると信じていた。

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