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花火の秘密

第1章 花火の秘密

「…亮ちゃん。どうする?俺ら二人だけで行動するけど。」

いまだに怒ってるのか口を開かない。

「…たっちょんと一緒におるんなら横っちょらのとこに行くけど?」

それでも返事がないため仕方なく来た道を戻っていく。

すると後ろから見覚えのある大きな影がついてくる。振り向くとふくれたままついてくる亮ちゃんの姿があった。

それはまるで欲しいものを買ったもらえなかった子供のように見える。

人が混雑していて、なおかつ流れに逆らって歩いてるものだからなかなか前に進まない。後ろを見ると人混みに見え隠れする亮ちゃんの後ろにはまだ小さくちょうちんの集まりが見える。


これじゃたどり着く前に横ちょと信ちゃんがどこかにいってしまう。それじゃ結局戻ったって意味がない。

後ろに下がり亮ちゃんの手をぎゅっと握ると、脇にあるさらに細い路地へと入った。濁流のような人混みから逃れられると、詰まっていた息をゆっくり深呼吸をして解放させた。

手を離そうとすると力を緩めると逆に亮ちゃんの手に力が入った。

「…離して。」

「どこいく?すぐそこに浴衣売ってるとこあるけど。」

「亮ちゃん、聞いてる?」

「よし。俺が選らんだろ。」

そのまま手を握って奥へと歩いていく。いぬの散歩の様に引っ張られて着いていくしかなかった。

ちょっとあるいてすぐに着いた小さな呉服屋にはおばあちゃんが一人、椅子に座って編み物をしていた。

ガラス越しに見える浴衣は色とりどりで、どれもきれいな印象を与えるものばかりだった。

「おばあちゃん。久しぶり。」

「ん?あら、亮くんやないの。そのおとなりさんは…彼女さんかしら?」

とってもお茶目なおばあちゃんだと思った。まさか本気だなんて微塵も思わず。

とりあえずその場はニコニコしてやり過ごした。亮ちゃんが勝手に「せやで。かわいいやろ?」なんていってることなど気にも止めていなかった。

浴衣に目を通していると、おばあちゃんが僕の顔をまじまじと見に来た。

老眼をちょっとしたに下げて、つぶらな目で見たあと、ゆっくり奥に行ってしまった。

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