
caramel
第3章 逢
保険医は笑みを浮かべたまま、
床に座り込んでいるその生徒に手を差し伸べる。
「床、冷たいから。椅子座って」
『…私に構わなくていーよ』
冷たい表情の生徒。
‥だったら
保健室に来るな
手間のかかりそうなヤツめ
苛々が顔に出てしまったらしい。
明らかに生徒は表情を曇らせた。
『…やっぱり、もう帰る』
「何で」
‥何言ってんだ俺は
コイツが出て行けば楽な話だろうに
『先生にとって、邪魔みたいだから。』
「先生にとって?…じゃあ、君は?」
『……もう少し此処にいたい、かな』
日光に照らされ煌めく彼女。
その哀しみを含みながらも輝く微笑は、
「なら、楽しい事教えてあげるね」
保険医の心までもを照らす。
‥俺が君に教えてあげられるのは
快楽、だけ…か?
‥いや
思考など不要
快楽は躰で味わえ
究極の甘い痺れに、
君は何処まで耐えられるだろうか
「始める前に一つ。君の名前教えて?」
『私は、田中 歌織(カオリ)。ねぇ、楽しい事ってどんな事?』
キラキラした瞳で此方を見詰めてくる歌織。
この先、何が起こるか想像すらしていない…いや、想像出来る方が凄い。
「楽しい事ってのはね…」
言いながら保健室のドアに鍵をかける。
「他に何も考えられなくなる位の快楽の事だよ?」
歌織は、元々大きい瞳を更に見開き、小さく震えていた。
『か…快楽って…』
『薬物…?』
