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caramel

第1章 欺

「っておい!!お前、何勝手に保健室入ってんだよ」

そこは未だ前の女保険医の荷物が多少残っていて、少し汚れが目立つ室内だった。

「先生。僕は潔癖症です」

「おう。それがどうかしたか」
軽く流してやる。


唐澤が怒りを露わにした。
「大人なら、とっとと片付けろや!」


‥その言葉すら
かわしてやるよ


「何か言った?掃除、宜しくね」

俺は唐澤からスリ師並みの早技で奪われていた保健室の鍵を無理やりもぎ取ると、
乱暴に保険医用と思われる椅子に座る。


「先生は本当にだらしない人ですね」

溜め息をつく唐澤。

これ以上の会話は時間の無駄だと理解したらしく、大人しく床を掃き始めた。


‥そういえば


「なぁ唐澤くん」

「くんって。…まぁいいや、何でしょうか?」


「童貞?」


「どうっ………はい??!!」

‥そのあからさまな反応は
童貞の証だよ唐澤くん
全く、ニヤニヤが止まんねぇよ


「俺は中二んときだったなー。唐澤は今、高三?」

「はい。それが何か」

‥凄ぇメンタル面強いな唐澤
もう無表情に戻ってやがるぜ


「じゃあ体験しとかないとなー。彼女いねぇの?」

「います。が、彼女が処女なのか心配です」

「みてやろうか?処女かどうか」

唐澤の顔が見るからに真っ青になっていく。

「そ『止めて下さいっ!』」


バタンッ

鍵は開けっ放しだったが、ドアは閉めていたので誰もいないと思っていた。

保健室に、黒く艶のあるストレートの髪がサラサラとなびく女生徒が現れた。

少し吊ったその瞳には涙が溜まっていて、今にも溢れ出そうだ。

「ゆず…?どうして此処に」

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