テキストサイズ

絡まる意味

第1章 絡まる意味

リンゴと一本の紐を持って家を飛び出し、駐輪場に停めてある自転車に乗り、彼女が暮らすマンションへと向かう。 そのマンションは決してきれいなマンションとは言いがたいが、僕はかなり好きなマンションやったりする。

三階の彼女の部屋の前で立ち止まる。

多分驚くやろうな。まさか僕が来るなんて思ってないんやから。

インターフォンのボタンを押す。リズムよく三回高い電子音がなる。

しばらくして彼女の声が聞こえた。

「結局来ちゃった。」

「え゛っ!?でも家あげられへんで。散らかってるし、具合悪いし…。」

「気にせんといて。別に散らかってても気にせえへんから。」

それでも入れてくれそうにない。

「もしかして、他に男上げてるとか?」

「いや、ちゃうけど…。」

「じゃあええやん?」

「こっちにもいろいろ事情があって…。」

彼氏の僕に言えない事情ってなに?それは浮気以外ないやんな?浮気したら、お仕置きが必要になってくんで?

僕は合鍵を使って中に入った。

清潔感のある白で統一された玄関。一個も散らかってなんかない。

バタバタと走ってきた彼女は真っ青な顔をしている。

しゃあないよね。二日酔いしてるんやもん。

「なんで入ってきたん!?」

「なんでって、心配やったから。」

「いや、鍵なんか渡してへんやん!!」

「借りてん。昨日。はい。返しとく。」

鍵を手に渡せばあわてて昨日持ってきていた茶色い鞄に鍵をいれる。

昨日は彼女が酔いつぶれて僕が家まで運んだあと、鍵を開けてあげてベットまで寝かせにいった。そのあと、鍵を閉めるために鍵を借りていった。

その事をすっかり忘れてる。しゃあないよね。二日酔いしてるぐらいに酔ってたんやもん。

「ごめんやけど、帰ってくれへん?」

「二日酔いしたんならご飯作るんだって大変やろ?僕が作るから。リンゴだって持ってきてんで。食欲ないんならこれだけでも食べてもらおうと思って…」

「…大倉。頼むから帰ってくれ。」

突然彼女は下を向いて頼んできた。そこまで僕と一緒にいるん嫌なん?

あんなに楽しそうにサッカーの話するのに。
あんなに楽しそうに笑ってくれるのに。
あんなに楽しそうにそばにいてくれるのに。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ