白雪姫
第2章 魔女になった瞬間
まるの行きつけだと言う居酒屋に足を踏み入れたときには客足がまばらになる9時を過ぎていた。
俺らは四人が座れるテーブルに顔を見合わせて座った。二人にはあまりに広く、寒い場所だった。
適当に注文を済ませると俺は早速口を開いた。
「…で、話したいことってなんやねん?」
「うーん…。お酒回ってからの方が言いやすいんやけど…。」
聞かなくても内容は顔に書かれた。
ただ注文を済ませただけなのに酔ったように真っ赤な顔になる姿にむなしく風が吹いた。
「…好きにしたらええやん。」
「…渋やんもなんかあんねんやったら話してや?僕じゃ頼りにならんかも知れんけど…。」
無愛想な俺に反してまると来たら全力で俺を心配している。原因が自分自身だとも気づかず。
「…おん。わかってる。」
うわべだけの言葉を相手に流して、顔をそらして品物を待った。
まるは直接顔を見なくても思っていることが全てわかるほど俺より気持ちが表に出やすいやつで、俺を見る目にははっきりと「不安」と書かれていた。
枝豆とビールが来ると、まるは空気を変えようとしたのか、突然でテンションを上げて品物の登場を喜んだ。
「かんぱーい」と勝手にかけられた号令に俺はジョッキを前に出す。
もし本当の気持ちをまるが知ったらいかにも楽しそうに飲むこの姿が消えてしまうのだろうか?
枝豆を口に放り込みながらまるは話すべきことを避けるようにたわいもない話を永遠と話す。
元々から聴く側の立場の俺には隙が見えなかった。
かなりお酒も進んだところで、まるはようやくおとなしくなった。
まるはアルコールが入ると真面目になる。