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シトイウカ

第1章 いち。

「日々是幻」

波の向こうに浮かぶ街は
陽炎に揺れているのに

それでもあの街が幻でないのは
カラスが帰っていくからか

ゆらゆら降った
カラスの羽が

ふわりと湖面に浮かべば波紋

流れる雲に目をほそめ
凝らせば見えん
世界樹の
枝葉にとまる
黒沢に

一人、舟を漕ぎ出せば
オールの巻いた渦の中
カラスの羽が流れて落ちた

陽炎の街は今日も揺れていて
私はいったい
此処にいるのか
彼処にいるのか
さっぱり判らなくなってしまう

そうして明日も
私はいったい
幻のようなこの街を
さっぱり判らないまま
歩くのです

羽を失なったカラスのように

終わり



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