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シトイウカ

第1章 いち。

「墓参り」

西陵に
沈む夕陽に黄昏て
臨む古寺
逢魔時

渇いた墓石に
柄杓持ち

夕闇に
潜む亡者の囁きに
拒めば恐れとなりけんと

ただ無、ただ空
一人、所作する

蝋燭にマッチを擦り
灯した炎は風に揺れ
束ねた線香に煙る匂い

合掌し、目を閉じれは
諸行無常
虚ろいて此処にあるのみ

生死に境なく
耳傾ければ
輪廻を感ずる

世の魑魅魍魎と比ぶれば
愛しきことこの上なし

暫しのけじめであるけれど
炎を消せば香のみ漂う

辺りの闇に感謝して過ぐ
盆の夕は過ぐ

終わり



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