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シトイウカ

第2章 に。

「お彼岸お軽トラ」

軽トラの荷台で揺られて走る田んぼ道
畦には真っ赤な彼岸花

人間とは人の間と書いている

この身体を一時借りて過ごす時間

大往生のばばあに死化粧
やっとこ迎えがきたと微笑んでやがる
よかったな
安心して逝きやがれ

軽トラがぬかるみで車輪をとられる
長く使えば何でもガタがくるもんだ
パワーがないんだ

農道にかがんでみれば
赤い花弁に
昨晩の雨の名残が光っている

刈り取られた田んぼに
稲が干されて並んでいる
雀が籾をついばんでいる

トノサマガエルが水路にはねる

煙草の灰を落として見上げる
空高く雲高く
トンビの声がこだまする

そして
なんとか、かんとか
気合いを入れて
オンボロトラックは
ぬかるみから出て走っていく

がたぴしがたぴし。

終わり





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