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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第110章 美香のPartTimeLove⑦

「アタシ将来の目標があって。今の学生の間にお金を貯めたいの。これは親にはたのめないことなの。でも、学校が忙し過ぎて普通のバイトだってなかなかできないんです」
アタシはイッキ君に向かい合い半歩前に進んで言った。後ろから来た自転車が、今度は二人を避けて通り過ぎて行った。

「その目標ってお金がいるんだね?」
イッキ君が言った。もうさっきのような強さは無く、すっかりあきらめたような言い方だった。

「はい。アタシは山陰地方の山の中の小さな村から、その目標をかなえるために神戸に出て来たんです。それなりの覚悟はあります」アタシは、自分の夢を声に出して言ったことが無かった。声に出してみると、夢を叶えるために体から力が涌き出るような気がした。
「凄いね。本当に凄い。ボクにはそういう目標がずっと見つけられずにいたんだ。とても羨ましい。そしてボビーさんが言う…ボビーさんって言うのはお店のオーナーなんだけど、覚悟がある。ボビーさんは「強い覚悟があれば心は折れない」って言ってた。それと強欲になって稼ぐためっていうモチベーションがぶれたらアカンとも言ってた。美香ちゃん。どちらも備えてるんだ。」
イッキ君の言った意味は今は全部わからなかったけど、アタシにもできるかも知れないということだと思った。

「じゃあ、良かったら細かいお仕事の内容やお給料の話はボビーさんがしてくれることになっているから一度きいてみたらいいよ。話をきいて無理だと思ったら、もちろん断ってくれたらいいんだ」
イッキ君はそう言って優しく微笑んだ。

「普段から時間が無いのですぐにでも話がきいてみたいです」
アタシはせかすように言った。

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