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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第119章 美香のPartTimeLove⑰

「そういえば、イッキ君って関西弁なのか関東弁なのかわからないような不思議なしゃべり方するよね。今言うことじゃないかも知れないけど」

アタシは鏡越しにイッキ君を見ながら言った。

「父と母が二人とも関東の出身で、家では関東弁で話すんだ。でも外ではできるだけみんなと同じように関西弁で話そうとしてるんだ。子供の頃にはよくからかわれたから」

イッキ君はアタシの方をちゃんと見ずに観葉植物に話すかのように言った。

「そういうことだったんだ。アタシはまだ、うまく関西弁が喋れないな。こっちの友達もいないし。だからできるだけ標準語で喋ろとしてるの。アタシの地元の言葉ってあまり好きじゃないの」
アタシはイッキ君の方を向いて言った。
「ボクでよかったら友達になって下さい。関西弁はうまくならないけどね」
イッキ君が言った。アタシの方をちゃんと向いていた。
「それは撮影が終わるまで考えさせてね」
アタシは部屋の入り口の方を見ながら言った。
そこに笑顔の男の人が立っていた。

「はじめまして。店長のケンです」
アタシの方を見て顔をくしゃくしゃにして笑いながら言った。
シワ一つ無い白いワイシャツを着て首から大きなカメラを下げていた。
さっきのボビーさんもそうだけど、どうしてこの人たちはこんなに優しい笑顔ができるのだろうか。
アタシが今からやろうとしているのが、風俗の仕事だというのを忘れてしまいそうだった。

「お疲れさまです」
イッキ君が挨拶した。ケンさんが笑顔で答えた。そしてアタシの方を見て言った。
「イッキ君凄いじゃないか。オレはこの業界で何百人って女の子を見てきたけど、このコはお世辞抜きでとびっきりやね。これは別格に大切にしないとアカン。間違いなく「ラピスラズリ」の宝になるよ」

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