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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第124章 美香のPartTimeLove22

「じゃあミカちゃん。あそこの入口から入って、左手にエレベーターがあるから、そこから上がって402号室でお客さんが待ってるからノックして入るんだよ」イツキ君は正面にある半透明の大きなガラスの扉の入り口を指差して言った。

結局イツキ君は、車に乗ってから、一度もアタシの顔は見なかった。

アタシは返事もせずに車を降りてホテルの入り口に向かった。

ホテルの入り口まで行ってアタシはそこでクルっと回って、また車に戻った。

トントン。

アタシは運転席側の窓をノックした。

音もなくスルスルと窓ガラス下がった。

「ねぇ。イツキ君。もしアタシがパニックを起こして、おかしくなってしまって、大変だと思うようなことになっても、絶対に警察だとか救急車だとかは、呼ばないでほしいの。お願い。約束して。
心配しないで。すぐに落ちつくから、さっきの事務所にアタシを連れて戻してね」
アタシはイツキ君の目を見つめながらそう言った。

イツキ君は一瞬とても驚いた表情をしたけど
「わかった。そうする」
と、アタシの顔を、目を、しっかり見ながら言った。
「でも…」
イツキ君は何かを言おうとした。
「いいの。ただ、それだけ。それだけなの」
アタシはそう言って、またホテルの入り口に向かった。




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