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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第16章 覗いてはいけなかった③

お父さんはニッコリ笑って私の手を取り、私を抱っこした。
そして私をソファーに座らせ、パジャマを脱がせながらお父さんは言った。
「ホラお母さんをよく見てごらん。お母さんはどうしょうもなく汚れた人だから、こうしてお父さんが折檻してるんだよ。これはお母さんのためなんだ。だから分かるかな。お母さん嬉しくて喜んでるだろう?」
私は何も答えることができず、恐る恐るお母さんを見た。
お母さんは私の顔をじっと見て・・・
私を冷たい目で睨みつけていた!
え?何故?どういうこと?私は何も悪いことはしていないよ。どうしてお母さんは怒っているの?
お父さんがとても怖くて、そして助けてほしい頼りのお母さんも怒っている。私は怖くて悲しくなってどうしていいか分からず泣き出してしまった。
そうしたらお父さんが私の髪を撫でながら言った。
「泣くんじゃない。お母さんはとても悪い人だから、こうして折檻されなきゃいけないんだ。でも美香は大丈夫だよ。でもあんまり泣いたら美香もお仕置きされるよ」
「美香はお父さんの可愛い可愛いペットなんだからいい子にするんだ」
「さぁわかったらこれを着けるんだ」

お父さんが手に持っていたのは犬が着けるような鎖が付いた首輪だった。


「ねぇお父さん許して。美香こんなの嫌だ。止めて。お願いだから止めて。もう絶対お父さんの部屋を勝手に覗いたりしないし、お片付けも宿題もお手伝いだってちゃんとするから許して!」


今、亜里沙が泣き叫びながら目の前にその場面が浮かぶくらいの細かな記憶の再現をし、突然気絶するかのように脱力し、また催眠の中に落ちた。

私は想像を絶する悪夢のような記憶を知り、言葉を失ってしまった。
一人の少女が破壊されるには充分の出来事だろう。
その時、美香ちゃんは、これは自分に起こっていることではないと、感情と記憶を切り離したのだ。別の誰かに封印して。

私は、目の前にいる亜里沙だった女の子に声もかけられず次に誰が現れるのか待ったがもう誰も現れず深い眠りについているようだった。

全てを隠してしまう記憶の奥の深い溝に戻り、固い殻を閉じた眠りに。




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