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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第17章 純の話①



アタシは高3になった。
高校に入ってから伸ばしていた髪は背中までになっていた。
胸の膨らみもだんだん大きくなっている。アンダーが細いから制服を着ると、全然まだ大きくはは見えないけどカップでいうとCはある。
アタシはお風呂に入る時、毎日鏡に映った自分の裸の体を時間をかけて点検するように見る。グラビアアイドルたちなんかと比べたら、痩せこけた子供っぽい体に見えるかも知れないが、アタシは自分の胸の形と小さくて丸いお尻がけっこう好きだった。

この体はアタシのモノ。
でもアタシだけのモノではない。
アタシの中の他の人達もこの体を好きでいてくれているのだろうか?

アタシは、みんながこの体を大事に思っていることを願った。

ちょっとした騒動が起きていた。
学校の生徒が作った
「小田西高校クィーン総選挙」
なるサイトにアタシが勝手にエントリーされていた。
アタシはそんなものには全く興味が無かったけど、1か月後にはアタシがグランプリ!?に選ばれて回りがはやしたててきた。
その日から、今まで以上に何人もの男子が付き合いたいと言い寄ってきた。同じ学校の生徒だけではなく、ちょっとガラが悪い学校の生徒が言い寄ってきたりして驚いた。 
彼らはだいたい決まって、短い自己紹介の後にまるで何かの募金の様に「お願いします!」と手を出してきたり手紙を差し出してきたりした。アタシはそんな彼らの顔も覚えていなかった。
さらに「美香を守る会」などまで勝手にできアタシを遠目からガードするという連中まで現れ、さすがに迷惑でうんざりした。
アタシは自分がかかえている問題を回りに知られることを恐れた。アタシがアタシでなくなる時間を見られることだ。

あと1年。

この先にまだ大きなハードルがあるにせよ、ここまでは順調にきているはずだった。
あと少し、あと少しだけ静かにしていてほしかった。

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