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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第18章 純の話②

そんな頃に出会ったのが純だった。
「おおぉー♪こんなとこで女王様と会うなんて!しかしアンタもゾロゾロ変なの引き連れて大変やなぁ」
それはこの辺りではきかない、TVでお笑い芸人さんが喋るネイティブと言っていいだろう関西弁だった。アタシの学校の制服を着ていた。
アタシは受験の参考書を買いに駅前の本屋に行く途中だった。守る会の連中が少し離れて着いてきていた。
自分を王様だという関西弁の男の子が守る会の連中に睨みをきかせるとバラバラと散らばったのが不思議だった。
「せっかく王様と女王様がバッタリ出会ってんからマクドくらい行かなアカンやろ」
彼はアタシの手をとって早足で歩き始めた。
異性に手を握られることなど初めてだったアタシは、一瞬体がこわばるのを感じた。しかし彼は倒れそうなアタシを助けるかのように強引ではなく自然に手を取ったので気づけば一緒に歩いていた。
彼は純。アタシはマクドナルドのシートに向かい合って話をきいていた。
純は同じ学校の野球部のキャプテンでピッチャーで4番だという。
野球のルールも分からないの。とアタシが謝ると。
「そんなん全然謝らなくていいよ。オレかてラクロスのルール知らんもん」と言った。そして
「でもオレは東京の大学行って必ずプロに入る。どうや?これなら感激するか?」と言った。
純は日に焼けて精悍な顔つきをしていた。短髪でワックスか何かで髪をツンツンと立てていた。少し吊り上がった鋭い目が印象的だった。。背が高くさすがに顔も体も引き締まっっていて無駄な肉がないという感じだった。
柑橘系のコロンの匂いが微かにしてアタシは調子のいいヤツだと思った。
純と話しをしていてアタシが思ったのは、今、こうして男の子と向かい合って二人で話しているのは本当にアタシかということだった。それが自分でも信じられなかったのだ。しかし空白の時間もなく彼との話がすすんでいるのでこれはどうやらアタシなのは間違いないようだった。
純と話をするのは楽しかった。自分のことだけを一方的に喋りアタシのことはほとんどきいてこない。そして中学まで関西に住んでいたという彼の話は、関西に興味があるアタシには面白かった。
純はお願いしますではなく「付き合おか」と言った。そして「これでお互いウルサイヤツらがいなくなるかな」と言った。

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