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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第20章 純の話④

付き合って一週間で、まだ彼女らしい言葉の一つも言えてないアタシを純は家に誘った。
それがどういうことを意味するかくらいはわかっていた。
アタシは少し躊躇したものの流れにまかせることにして彼の部屋に上がった。
家に両親は仕事でいなかった。
男の子の汗の匂いが充満した純の部屋は、壁中に野球選手のポスターや写真の切り抜きが貼ってあった。よく見るとその選手たちはみな違う選手で、それが彼らしいと思った。
それでも、さすがに進学校の生徒らしく本棚には参考書が並んでいた。(勉強していたんだ!)あとはマンガ本とアニメ?のフィギュア。これが男の子の部屋か。まるで子供部屋だ。
部屋に入ると純は
「何か飲む?」
と訊いてきた。
普段そんな気遣いなど全くしない純が、これから期待しているであろう下心を隠すための行動だと思い
「喫茶店に来ている気はないよ」
と言ってやりたかったが
「冷たい水」
とアタシは答えた。
純が自分の飲み物と(彼が持ってきたのはアクエリアスだった。彼女との二人の雰囲気をスポーツ感覚でとらえているかのように思えた)グラスに入れた水を持って来て、お互いに一口飲んだ。
そして純はベットに座り、アタシに隣に来るように言った。
アタシが言われたように隣に座ると、いきなり抱きしめてキスをしてきた。
これがアタシのファーストキス。
こんなものか。
まったくドキドキ感もない。アタシの頭ははとても冷静だった。
純の少し荒くなった息使いや、痛いくらい力の入った腕のことよりも、アタシはまるで俯瞰して自分を見つめるかのようにアタシ自身を感じていた。

大丈夫アタシはまだアタシのままだ。

純に押されアタシはベットに倒れこんだ。
純が強引にブラウスの中に手を入れ胸をわしづかみにした。
スカートの中に手を入れようとした時。

「嫌!!」

アタシは純を突き飛ばした。



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