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「これがあの日起こった全てです」
ギルティと名のっている美香は、かすかに唇を震わせて低く重く体に響く音の波で私に伝えてきた。

私が美香に、不安のない日常生活をするには常に誰かが美香を監視していないとダメだと言った。すると、驚いたことに美香は自分の中に、監視しコントロールできる人格を形成させたのだ。実際ギルティにどれほどの力があるのかまだわからないが他の人格の時に起こっていることの把握をしているのは間違いないようだ。

「先生はまだ私のことを疑っているでしょう。それも当然のことだと思います。では待っていて下さい」

そういうとギルティだった美香は一度目を閉じ、それからゆっくり目を開いた。

美香はうつむきながら私の顔をチラっと見て恥かしがるようなそぶりをして言った。

「先生お久しぶりです」

それは甘えた感じの子供っぽい声だった。

「久しぶりだね。亜里沙さん」

私は優しく笑い亜里沙に言った。

「はい。でも、せっかく久しぶりにお話できるのに残念だけど先生、私はもう戻らないといけないみたいです。ギルティが呼んでます。」

戻る？いや、亜里沙とはもう少しでも話がしたい。彼女は私にとても協力的だからだった。

「それは残念だ。私はもう少し亜里沙さん
とお話がしたかったんだ。じゃぁ一つだけ教えてくれないかな。亜里沙さんはギルティさんのことをいつ知ったのかな？」

「ギルティとはじめてお話したのはさっきですよ。でもギルティのことはずっと昔から知っていたように感じるんです。まるで自分の体の一部みたいに」

そう言って亜里沙は目を閉じ脱力した。


「先生アタシはいろんなことがもう怖くなくなりました。」


さっきより、すっと背筋が伸びて、その顔は眩しいほどの美しさを放っていた。

「美香さん戻ってきたのかな？」

「はい先生。アタシには今先生と亜里沙ちゃんが話をしていることが見えていました」

「そうなんだ。。それを見て感じて美香さんは混乱しなかったのかな？」

「混乱？ギルティは混乱させないために現れたんですよ。アタシたちにはそれぞれの役割があるんです。その場面場面に合わせてギルティがアタシたちの入れ替えをする。そしてそれぞれが違反行為をしようとしたりピンチな時も入れ替えてしまう。自傷や犯罪行為とかね。」